建物は古くなってくるとあちらこちらに不具合が出てきます。
もう少し先でも良いか、とついつい先送りしてしまいますが、不具合箇所によっては、
適切な修繕をしておかないと建物の劣化が進み、もっと修繕費用がかさむことになります。
建物の修繕は建築してから何年後にどのくらいの費用がかかるのかまとめました。
なお費用の目安は1棟10室程度のワンルームタイプの木造賃貸建物を想定しています。
目次
1.入退去に応じて短周期で発生する修繕
壁や天井のクロスといった室内の修繕は、建物の劣化にはあまり影響しませんが、
賃貸では退去汚れや不具合が残っていると次の入居者が決まらず空き家が長期化します。
賃貸入居者の退去時には修繕とクリーニングを行うことが一般的です。
退去時の修繕としてやっておきたい部位と費用の目安は次のとおりです。
(1)壁や天井のクロス張り替え
天井や壁がキレイだと次の賃貸入居者に好印象です。費用も6畳間の壁と天井の張替えで5万円ほどと費用対効果が高い修繕です。
(2)床の修繕
損傷の程度によっては部分補修でも充分ですから費用も抑えられます。
全面張替えでは床材によって変わります。
和室の畳表替えであれば、ローコスト材を使って1畳あたり5千円が相場です。
カーペットの張替えであれば、ローコスト材を使って6畳間で6万円が相場です。
フローリング張り替えであれば、ローコスト材を使って12万円が相場です。
(3)建具(ふすま・障子)の張り替え
ふすまは1面あたり3千円、障子は1面あたり2千円が相場です。
2.設備交換として長周期で発生する修繕
建物内外の設備関係の多くは耐久性がありすぐに故障するものではありませんが、10年を超える時期から故障が増え始め20年もすると交換時期となります。酷使された使い方では10年程度で交換が必要となることもあります。
(1)給湯器
10年が交換時期ですが、不具合が無ければ故障してから対応してもかまいません。交換費用は本体と工賃込みで10万円が相場です
(2)トイレ
耐久性が高いため通常は30年交換しなくても持ちます。使い方によっては詰まりによる水漏れが発生しますが、修繕費用は5千円程度です。
(3)浴室
全面交換が必要となる不具合は少ないですが、シャワーヘッドや浴室ドアなどのパーツは10年を過ぎる頃から不具合が増えてきます。 それぞれのパーツの修繕は1万円から3万円程度です。
(4)キッチン
一般的には消耗の激しいコンロ台など部分的な交換で事足ります。コンロ台の交換は本体・工賃込みで10万円が目安です。
(5)エアコン
使用頻度によっては2年で故障することもありますが、通常の使い方であれば10年程度が交換時期です。 不具合が無ければ故障してからの対応でもかまいません。交換費用は本体と工賃込みで8万円が目安です。
(6)窓サッシ、網戸、玄関ドア
パッキンや戸車など細かなパーツは5年から10年で取り換え時期となりますが、躯体は耐久性が高いため30年交換しなくても持ちこたえることが多いです。
網戸は建具と同様、賃貸入居者の退去時に張り替えておくとよいでしょう。
3.10年から15年で実施すべき修繕
もっとも大規模かつ出費となる修繕は、屋根や外壁といった外回りの修繕です。
屋根や外壁は、紫外線や雨など天候の影響を直接受けますから劣化が早く、
劣化が進んだ状態を放置すると雨漏りによって室内の劣化、家財の損傷にもつながり損害が大きくなります。
屋根や外壁の修繕が大きい出費となるのは必ず作業をするために足場を組むからです。
足場は作業の安全のため建物周囲をぐるりと取り囲みますが、足場部材の運搬、設置、解体とどうしても大がかりな工事となり、費用もかさみます。
屋根、外壁の修繕、給排水管取り替え、排水桝の修繕は、10年から15年が目安となります。
費用がかさむ外回りの修繕は、事前に修繕個所を調べて置き一回の足場で計画的かつ集中的に行うと効率的です。
(1)屋根修繕
高品質の塗料や補修材が開発され、修繕サイクルは伸びています。
特に不具合が見られないようなら15年経過時期に防水塗装を行っても良いでしょう。
防水塗装では、主流のシリコン系塗料・面積80㎡として約35万円が相場です。
※足場込み
屋根葺き替え後30年経過し劣化が進んでいる状況であれば、葺き替えも検討します。
屋根葺き替えでは、スレート材・面積80㎡として約85万円が相場です。
※足場込み
(2)外壁塗装
外壁は風雨にさらされ劣化の早い部分です。
外壁は防水塗装が主流で15年経過時期に屋根修繕と合わせて施工することが効率的です。外壁は面積が大きくなるため費用としては大きくなり主流のシリコン系塗料で160万円以上が相場です。
※足場込み
(3)給排水管、雨樋、排水桝
給排水管と雨樋も修繕には足場が必要となることが多いです。
給排水管は、不具合が無い限り修繕や取り替えは必要ありませんが、一般的には30年経過時期にはかなり老朽化していることが多いので、屋根や外壁の修繕時期に合わせて全交換しておくことと良いでしょう。足場を別に組む必要がなくなり効率的です。
雨樋、排水桝は不具合の都度修繕を行いますが、大規模修繕の時期に合わせて点検し修繕しておくと良いでしょう。
4.修繕時期に応じた概算費用まとめ
国土交通省資料による新築してから経過年数に応じてかかる修繕費用の目安は次のとおりです。30年間の合計は1棟あたり1740万円になります。
年数 | 価格(一棟あたり) | 備考 |
---|---|---|
5~10年 | 70万円 | ベランダ・階段・廊下塗装、 室内設備修理、排水管高圧洗浄等 |
11~15年 | 520万円 | 屋根・外壁塗装、ベランダ・階段・廊下防水塗装、 給湯器等修理・交換、排水管高圧洗浄等 |
16~20年 | 180万円 | ベランダ・階段・廊下塗装、室内設備修理、 給排水管高圧洗浄等・交換、外構等修繕 |
21~25年 | 800万円 | 屋根・外壁塗装・葺替、ベランダ・階段・廊下防水塗装、 浴室設備等修理・交換、排水管高圧洗浄 |
26~30年 | 180万円 | ベランダ・階段・廊下塗装、室内設備修理、 給排水管高圧洗浄等・交換、外構等修繕 |
計画修繕 ガイドブック 国土交通省