例えば建物は購入した際には、建物という固定資産として計上し、決められた耐用年数に分けて費用化していきます。
数年に分けて費用化することを減価償却といいます。
固定資産には、
建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、⾞両運搬具など様々な種類がありその使用方法や性質によって何年で費用化するかを決められています。
固定資産は決められた年数で減価償却されますが、少額であれば一度に費用化できます。
経営的には経費にできるものはできるだけ経費にすることが望ましいです。
なぜなら早く経費にできると早く税金を減らすことになり、税負担が減った分を再投資に回してさらに増やすことが可能になるからです。
ここでは少額の固定資産について全額経費にする方法を説明します。
目次
1.固定資産の金額の判定-どこまでで一つか?
固定資産は1台、1基、1個、1組、1そろいごと、一つずつで判定します。
機械及び装置は1台又は1基ごと
(少額の減価償却資産又は一括償却資産であるかどうかの判定) 49-39 令第138条又は第139条の規定を適用する場合において、取得価額が10万円未満又は20万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引されるその単位、例えば、機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、1組又は1そろいごとに判定し、構築物のうち例えば枕木、電柱等単体では機能を発揮できないものについては、社会通念上一の効用を有すると認められる単位ごとに判定する。 |
工具、器具及び備品は1個、1組又は1そろいごと
所得税法基本通達49-39
この1個、1組、1そろいは、物理的に1つで機能が完結していればそれで1つの単位となります。冷蔵庫、テレビ、洗濯機などは一つで機能が完結します。
次のようなものは数個が集まって機能することになるため、セットで一つの単位となります。
応接セットはテーブルだけ、椅子だけといった単体ではなく、応接セット全体で一つ
カーテンは1枚だけの単体ではなく、1組として使用される単位(部屋)で一つ
パーテーションは一枚だけではなく、数枚が組み合わされて隔壁等を形成し機能を有する単位で一つ
固定資産の金額がどこまでで一つかは、機能する単位で一つと判定します
単体一つで機能が完結するなら単体一つで一単位
組み合わせで機能を発揮するなら組み合わせで一単位
2.金額ごとの有利な減価償却処理
少額の固定資産は、金額によって費用にできる範囲が決まります。
通常は次のように、最も費用化できる方法を選ぶことが多いです。
10万円未満のものは全額経費にする
10万円以上20万円未満のものは一括償却又は少額減価償却資産にする
20万円以上30万円未満のものは少額減価償却資産として全額経費する
金額 | 制度 | 減価償却 | 償却資産税 | 青色申告要件 |
10万円未満 | - | 全額 | 対象外 | 不要 |
10万円以上20万円未満 | 一括償却 | 3年均等 | 対象外 | 不要 |
少額減価償却資産特例 | 全額(上限300万円) | 対象 | 必要 | |
20万円以上30万円未満 | 少額減価償却資産特例 | 全額(上限300万円) | 対象 | 必要 |
注意点は、一括償却資産は3年で償却するため費用化は遅くなること、少額減価償却資産特例は青色申告が要件になっていること、市町村が課税する償却資産税の対象となっていること、適用上限が年間300万円となっているところです。
10万円以上20万円未満の範囲は、どちらの制度を選ぶべきか悩むこともあります。
10万円以上20万円未満の範囲では、所得が大きい年は、少額減価償却資産特例を上限300万円までを優先して使い、残りは一括償却資産にします。
所得がかなり少ない年は、一括償却資産で処理しておくと償却資産税を少なくすることができます。